私は「薬を使わない」薬剤師として活動をしています。
薬剤師になったのはかれこれ36年前、それ以来医療の現場でいわゆる「患者さんに薬を出す」仕事を
20年くらい続けました。毎日毎日患者さんが処方箋を持ってやってくる。
それに対して「少しでもよくなってほしい」「楽になってほしい」という想いをこめて私たち薬剤師は薬を調剤し、
手渡します。ちゃんと用法を守って飲んでくださいね、という言葉を添えて。
でも、そんな日々の中で私の心の中に積もっていく想いがありました。それは「毎日こんなにたくさんの患者さんに薬を出し続けているのに、
どうして薬を求める患者さんの数が減っていかないんだろう?」ということです。患者さんが薬のおかげでよくなって薬を飲まなくなるどころか、
薬の量が増えていく人の方が多かったように思います。最初は軽いお薬が1錠だったのに、それが2錠になり3錠になり…、
気がつけば複数の種類の薬を20錠、30錠飲むように指導するなんていうこともありました。
「あれ? 私はいったい誰のために何がしたくて薬を出しているんだろう」と、ある日ふと思いました。
そのときから始まったのが「薬っていったい何だろう?」という問いかけです。
薬を飲み続けても病気がよくならないなら、何のために薬を飲んでいるんだろう?と強く疑問に思うようになりました。
現在の薬局で処方されるような薬、つまり西洋薬が世に広まるようになったきっかけは1800年代半ばのクリミア戦争です。
戦争中、戦地では多くのけが人が出ます。出血を止める必要がありました。
また、不衛生を強いられるような場所で集団生活をしているので感染症などが広がる危険性もありました。
急性のケガや痛みを一時的に抑えたり、出血を止めたり、
感染症の原因となる菌を減らしたり殺したりすることには薬はとても有効で素晴らしい力を発揮します。
そう、そもそも薬は急場をしのぐためのものだったのです。
ところが、その後私たちは慢性疾患に対しても薬を使うようになっていきます。薬の力で値を下げるということを慢性的に続けているのです。
現在、病院で処方されている薬の約9割は慢性疾患に対するものだと言われています。
薬というのは、ほとんどが合成物ですから人間の身体にとっては「異物」です。異物ですから、身体の中に入った薬は本人が感じるか感じないかに関わらず様々な影響を良くも悪くも及ぼすことになります。
目に見えたり、明らかに身体の調子が悪かったりする場合は副作用として大きく注目されますが、
それ以外でも何らかの異物反応は起こっているはずです。
そのような異物でもある薬を、急場をしのぐためだけではなく半永久的にのみ続けたら、
いったい身体にどんな影響を与えることになってしまうのか?
私はとても大きな不安を感じています。薬が必要な場面というのは、もちろんあります。
だから、私は薬を完全に否定する立場ではありません。
薬によって助けられることがたくさんあることを知っています。
ただ、一方で「必要じゃない」場合も多いのではないかと思うのです。
特に慢性的な病気の場合には、本当にその人の身体を治すことができるのはその人自身だけだと思うに至っています。
だからこそ、今飲んでいる薬が本当に手放せないものなのかをご自身で考えていただき、
どうしたら薬を必要としない身体を作ることができるのかをみなさんに伝えることが「薬を使わない薬剤師」としての私の使命だと思っています。
「自分の健康は自分で作る」
多くの方が薬に頼ることなく「健康での自立」をされることを心から願っています。